今回の記事は、前回の「企業の危機管理体制構築」からの続きで「危機管理マニュアルの作り方」となります。
前回の記事では、企業にとって危機管理体制の構築がいかに重要かということをお伝えしました。
この危機管理体制の肝となるのが「危機管理マニュアル」の作成です。
しかし、前回も書きましたが「危機管理マニュアルを作成しましょう」と言われてもすぐに書き始めることは難しいと思います。
なぜなら、「何を書けばいいのか」をすぐに思い浮かべることができないからですね。
ですが、書くべき項目だけでもわかれば、だいぶ違ってくるのではないでしょうか?
「ニュースリリース」でも「企画書」でも、「さぁ、書こう」と思っても「う~ん」となってしまいますが、構成がイメージできると、その後は案外すらすら書けるものです。
そこで、今日の記事では危機管理マニュアルに記載するとよい項目についてお伝えします。
御社に危機管理マニュアルがまだ整備されていないのであれば、今回の記事を参考にしてください。
マニュアルに記載する項目の例
マニュルに記載する項目に関してはその企業の自由となりますが、一例を次に挙げておきます。
- 危機管理マニュアルの目的
- 基本方針
- 適用範囲
- 定義
- 達成目標
- 対象とするリスク
- 危機管理のための組織体制(平常時・緊急時・収束時)
- 部署の組織体制
- 関係機関
- 危機管理対応基準
- 危機管理のための連絡・指揮・命令系統
- ケース別マニュアル
各項目に関し、簡単ではありますがご説明します。
危機管理マニュアルの目的
マニュアルを作成する目的を記載します。
基本方針
どのような方針で危機管理に臨むのかを記載します。例えば、「当社は、危機管理を徹底することで利益阻害要因を除去し、事業を安定的に運営していくために危機管理マニュアルを作成し・・」といった危機管理についての様々な方針を述べます。
適用範囲
この危機管理マニュアルを適用する対象をどこまでとするのかを明確に規定します。例えば、正社員だけなのか、アルバイトや派遣社員も対象とするのかといったことです。
定義
マニュアルの中で使う言葉の定義をします。
例えば「危機」とは具体的にどのようなものを指すのか、「役職員」という言葉にはどのような人たちを含むのか、といったことです。言葉の定義があやふやだとマニュアルを読む人によって解釈の齟齬が発生します。マニュアルは誰が読んでも同じ解釈をされるようにしなくてはいけません。そのためには言葉の定義は重要です。
達成目標
危機管理マニュアルを作成し、その内容を遵守し実践することでどのような目標を達成したいのかを記載します。具体的には、「緊急時の対応に関する責任者や権限が明確にされている」「啓蒙活動によって全役職員が同じレベルで危機対応の内容を理解している」といったことです。
対象とする危機(リスク)
企業を取り巻くリスクは多種多様ですが、会社ごとに特に重点を置くべきリスクは異なってきます。そこでこの項目では、会社としてどのような危機を対象とするのかを記載します。前述の「定義」と同じく、読む人によって解釈が分かれないように明確に記載することが必要です。また危機のリストアップはある特定の部門だけが行うのではなく、実際に業務を行う現場も巻き込み、全社的に取り組む必要があるでしょう。
危機管理のための組織体制
危機管理を行うための組織体制について記載します。
組織体制は、「平常時」「緊急時」「収束時」の3つに分けて考えておいた方がいいでしょう。この組織体制を考え構築するのが危機管理マニュアルを作成する上での肝となります。各部署間の思惑もありなかなかまとまらないこともありますので、十分に時間を割いて実効性のある組織体制を考えましょう。
部署の組織体制
各部署での危機管理を行う組織体制を定めておきます。
関係機関
危機が発生したとき、その内容によっては、自社に留まらず関係が深い他の企業(顧客や取引先等)にもその影響が波及することがあります。また、事業を行うにあたり行政機関に許可、認可、届出等を行っている場合、問題の状況について、行政機関への連絡も必要となるケースがあります。そのため、危機が発生したときに連絡をとる必要のある関係機関をリストアップしておきます。
危機管理対応基準
どの程度の危機が発生したらどのような対応をとるのかについてその基準を定めておきます。実際に危機が発生した際には、この事前に定めた基準通りにやればよいというわけではなく、状況によって判断する必要も出てきます。だとしても、マニュアル内にベースとなる基準を設けておくことで、緊急時にも的確な判断がしやすくなります。
危機管理のための連絡・指揮・命令系統
危機が起こったとき、その被害、損害をいかに最小に食い止めるかは、対応の速さにかかっています。そのためには連絡・指揮・命令系統を明確にしておく必要があります。「見ていなかった」「知らなかった」ということがないように工夫をしましょう。
ケース別マニュアル
全くマニュアルがない場合は、まず早急に危機管理マニュアルを準備することが必要ですが、包括的な内容である危機管理マニュアルとは別に、個別の危機に関する対応を記載したケース別マニュアルも作成することをお勧めします。
いかがでしたでしょうか?
大まかなご紹介になりましたので細部までのイメージができないかもしれません。しかし、アウトラインはお分かりいただけたと思います。
危機はいつやってくるかわかりません。起きてから「あぁ、マニュアルを作っておけばよかった」と思っても遅いのです。
平時のうちに早めの着手をお勧めします。
本日もお読みいただきありがとうございました。