本日の話題は、フリーランスの取引に関する新しい法律である「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以降、フリーランス法と記載)についてです。
近年、働き方の多様化が進んで、フリーランスの方が増えていますが、PR業界はもともとフリーで活躍するコンサルタントやプランナーが多いです。フリーランスとして働く側にとっても、活用する企業側にとっても、法律の知識は重要なので、PRやマーケティングとはちょっと異なる内容ですが、ご紹介していきます!
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多くの企業ではフリーランスの方に業務を委託していると思います。よって、決して他人事ではないと思います。この法律は、2024年11⽉1⽇に施⾏されますから、残りあと50日ほどしかありませんので、フリーランスの方に仕事を依頼している企業の担当者の方は対応に漏れがないか十分にチェックしておきましょう。
さて、この法律は、フリーランスの⽅が安⼼して働ける環境を整備するため、下記の2つの項目を実現することを目的としています。
①フリーランスの⽅と企業などの発注事業者の間の取引の適正化
②フリーランスの⽅の就業環境の整備
フリーランスの方が企業と取引する場合、フリーランスの方がどうしても弱い立場になり、企業側の都合が優先される取引になりがちですね。ここにメスを入れようというわけです。
では、次に法律の適応対象を見ていきましょう。
法律の適⽤対象
法律の適⽤対象は、発注事業者からフリーランスへの「業務委託」(事業者間取引)となります。
発注事業者とフリーランスの定義は次の通りとなります。
・発注事業者=フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使⽤するもの
・フリーランス=業務委託の相⼿⽅である事業者で、従業員を使⽤しないもの
フリーランス法が制定された背景
では、フリーランス法はなぜ制定されることになったのでしょうか?その背景には次の4つの理由が存在します。
1.報酬の不払い・遅延問題
フリーランスが委託された業務に対して、正当な報酬が支払われない、あるいは大幅に遅延するといった問題。
2.契約内容の不透明さ
業務内容、報酬、支払い条件などが契約書に明記されていなかったり、曖昧なまま業務が開始されるケースが多くある。
3.パワハラ、ハラスメント
発注企業からの過度な要求や、人格を否定するような言動など、フリーランスに対するハラスメントが散見される。
4.交渉力の格差
組織である発注企業に対し、個人であるフリーランスは交渉力が弱く、不当な契約条件を飲まざるを得ない状況に置かれることがある。
いかがでしょうか?
「うんうん」と頷くフリーランスの方も多いと思います。フリーランス法が制定された後は少しずつこのようなことが減っていけばいいですね。
発注事業者に課せられる義務
では次に、発注事業者に課せられる義務について具体的に見ていきましょう。どのような義務が課せられるかは、発注事業者が満たす要件によって変わります。
パターン1
フリーランスに業務委託をする事業者であって、従業員を使⽤していない。
※フリーランスに業務委託するフリーランスも含まれる。
下記の表の①の義務が課せられます。
パターン2
フリーランスに業務委託をする事業者で従業員を使⽤している。
下記の表の①、②、④、⑥の義務が課せられます。
パターン3
フリーランスに業務委託をする事業者で従業員を使⽤している。そして、⼀定の期間以上⾏う業務委託である
下記の表の①、②、③、④、⑤、⑥、⑦の義務が課せられます。
※「⼀定の期間」は、③は1か⽉、⑤⑦は6か⽉。契約の更新により「⼀定の期間」以上継続して⾏うこととなる業務委託も含む。
※下記の表は中小企業庁のリーフレットより引用
義務項目 | 具体的な内容 |
① 書⾯等による取引条件の明⽰ | 業務委託をした場合、書⾯等により、直ちに、次の取引条件を明⽰すること
「業務の内容」「報酬の額」「⽀払期⽇」「発注事業者・フリーランスの名称」「業務委託をした⽇」「給付を受領/役務提供を受ける⽇」「給付を受領/役務提供を受ける場所」「(検査を⾏う場合)検査完了⽇」「(現⾦以外の⽅法で⽀払う場合)報酬の⽀払⽅法に関する必要事項」 |
② 報酬⽀払期⽇の設定・期⽇内の⽀払 | 発注した物品等を受け取った⽇から数えて60⽇以内のできる限り早い⽇に報酬⽀払期⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うこと |
③ 禁⽌⾏為 | フリーランスに対し、1か⽉以上の業務委託をした場合、次の7つの⾏為をしてはならないこと
●受領拒否 ●報酬の減額 ●返品 ●買いたたき ●購⼊・利⽤強制●不当な経済上の利益の提供要請 ●不当な給付内容の変更・やり直し |
④ 募集情報の的確表⽰ | 広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、 • 虚偽の表⽰や誤解を与える表⽰をしてはならないこと • 内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと |
⑤ 育児介護等と業務の両⽴に対する配慮 | 6か⽉以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両⽴できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと
(例)・「⼦の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること・「介護のために特定の曜⽇についてはオンラインで就業したい」との申出に対し、⼀部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること など※やむを得ず必要な配慮を⾏うことができない場合には、配慮を⾏うことができない理由について説明することが必要。 |
⑥ ハラスメント対策に係る体制整備 | フリーランスに対するハラスメント⾏為に関し、次の措置を講じること
①ハラスメントを⾏ってはならない旨の⽅針の明確化、⽅針の周知・啓発、②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など |
⑦ 中途解除等の事前予告・理由開⽰ | 6か⽉以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、・原則として30⽇前までに予告しなければならないこと・予告の⽇から解除⽇までにフリーランスから理由の開⽰の請求があった場合には理由の開⽰を⾏わなければならないこと |
フリーランス法に違反した場合
では、仮にこの法律に違反した場合はどうなるのでしょうか?
違反があった場合、公正取引委員会ならびに中小企業庁長官または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査などが行われます。また、命令違反や検査拒否などがあると50万円以下の罰金に処せられることもあります。また、発注事業者の従業員が違法な行為を行えば、違反者当人だけではなく、事業主である法人も罰則の対象となります。
ここは重要ですね。フリーランスとやりとりする担当者の無知によって違反を犯した場合、企業も責任をとらないといけません。これは企業イメージの失墜にも繋がりかねませんので最新の注意が必要です。
フリーランスとの契約や、業務管理する部門の方は法務担当者との綿密な打ち合わせを行っておく必要があるでしょう。
以上、フリーランス法の概要をお伝えいたしました。
お読みいただきありがとうございました。