今回は前回の記事の続きです。
前回の記事では、記者会見の開き方のうち、次の項目についてご紹介しました。
・開催日時を決める
・開催会場を決める
・会場レイアウト・動線の決定
・会見全体のスケジュール・流れの決定
・各スタッフのタスクの作成
では、続きをご紹介していきますね。
報道機関・メディアへの開催案内の送付
テレビ局、新聞社、雑誌社などに記者会見を開く旨を通知します。
記者会見の案内は、少なくとも記者会見開催の2~3時間前までに行うようにします。
危機対応時の記者会見は、開催日まで時間の余裕がないため、案内はメール、FAXや記者クラブへの持ち込みなどがいいでしょう。
しかし、普段、報道機関・メディアとの関係がない企業の場合、その連絡先が分からないということもあるでしょう。そういった場合は市販のPR手帳やマスコミ電話帳などを活用するといいです。記者クラブへの持ち込みに関しては、事前に連絡して了承を得る必要があります。記者クラブの連絡先もPR手帳やマスコミ電話帳に載っています。できれば平常時から、いざという時のためのメディアリストを作成しておくことをお勧めします。
資料・備品の準備
会見で使用する資料及び備品を準備します。
準備する資料、備品は会見内容によっても変わりますが、一般的なものを挙げると次のようになります。
資料
- 危機発生時から現在までの経緯をまとめたもの(ポジションペーパー)
- 想定問答集
- 会見に使うプレゼンテーションファイル
備品
- 演台・司会台・マイク・ホワイトボード・スクリーン・プロジェクター・ポインター
- ノートパソコン・登壇者ネームプレート・名刺受け・録音・録画機器など
※上記備品のうち、会場に備え付けてあったり、レンタルしてくれることもあるので会場に確認しておきましょう。
会見当日の流れと台本の作成
ここが一番の肝となります。
大まかな流れを挙げると次のようになります。
謝罪
危機発生時の会見なので、まずはお詫びからはじめます。ここで注意するのは、形式っぽいお詫びにならないように気をつけましょう。特に表情と声のトーンには要注意です。まったく謝罪の気持ちが伝わらない表情や声は反感を買います。会見模様の動画はSNSで拡散されますので、最悪の場合は炎上し、取り返しのつかないことになることもあります。
事実・経緯の説明(時系列で具体的に)
わかりやすく明確に説明しましょう。事前に「必ず言うべきこと」「聞かれたら言うこと」「聞かれても言わないこと」などを整理しておきます。ここで曖昧な回答をしたり、回答に嘘が混じっていたりすると、後で事実が判明してしまい火に油を注ぐことにもなりかねません。
対応について(応急措置とその後の対応対策)
対応について未定・不明の部分に関しては正直にその旨を公表します。憶測・仮定で言ってしまうと、後日そのことを追求される危険性があります。
原因・再発防止策について
原因については正直に嘘をつくことなく話します。再発防止策については、発表時点でまとまっていなければその旨を正直に話します。また、よく見せようとして、過大な事を話すのはやめておきましょう。
責任・処分について
「責任は誰がとって」また「どのような処分を下すのか?」を公表します。これについては難しい問題で、会見までにまとまらないことが多いと思われますので「今後、社内で検討します」と表現しておくという方法もあります。
質疑応答
記者からの質問を受け付けます。
これに対応するために事前に想定問答集を作成しておきましょう。
これがないと「えー」「あー」を連発することになり見苦しいですし、なにより不正確な回答をしてしまうことにもなりかねません。
想定問答集を作成したからといって、すべての質問に的確に答えられるわけではありません。想定していない質問をされた場合に備えて、担当部署の責任者や弁護士を会見に同席させることも必要でしょう。
質問への対応時の注意点
事実確認だけでなく追及や批判の質問を受けたとき、感情的な口調で回答する、また、あからさまに不愉快な表情を見せるのはよくありません。また、反論や議論もNGです。会見の様子がSNSに流れることを考慮し、あくまで冷静に紳士的に対応しましょう。会見の対応や様子に好感が持てれば、それだけでも会社に対する批判が和らぐこともあります。
身だしなみ
男性の場合、ダークスーツ(濃紺か濃いグレー)がよいでしょう。ダブルのスーツではなくシングルのスーツを着て前ボタンは必ず留め、パンツには折り目をつけておきます。夏でもネクタイはするようにしましょう。女性の場合も、男性同様ダークスーツを着用します。ダークな色の無地のワンピースなども可ですが、必ずダークな色目のジャケットを上から着用するようにします。
報道モニタリングと分析
危機発生(発覚)時は、報道の内容を常に注意してモニタリングを行います。特に記者会見を行った場合は、どのような内容で報道されるかを厳密にチェックすることが必要です。チェックするメディアは次のとおりです。
- テレビ
- 新聞・雑誌・各種ウェブメディアなど
- SNS・ブログ
これらをチェックし、報道、記事、投稿に大きな誤りや偏向があった場合は、訂正依頼をするなどの対応を検討します。また、会社経営に大きな影響がありそうな報道になっている場合は、現場での対応策も同時に検討する必要があります。一番厄介なのはSNSへの対応です。投稿に大きな誤りや偏向があった場合でも、その拡散は止まらないことがほとんどです。自社HPやマスコミ報道を通じて正しい情報を発信することで、SNSの情報が事実と異なることを伝えていくことになります。
電話・メールへの対応
報道・SNS等を見た一般の人から、電話・メールで批判、事実確認などが入ることがあるため、そのための対応マニュアル(Q&A)も事前に準備しておくようにします。電話で語気を荒げたり、メール文で誠意のない対応をすると、その対応についての批判がSNSなどで一気に拡散される可能性もあるため、使用する言葉やトーンには十分に注意が必要です。
以上、危機発生時の記者会見の開催の仕方について、簡単ではありますがご紹介しました。
危機管理上、記者会見は非常に重要です。会見の印象が悪ければ、最悪、会社が存続できなくなることもあります。逆に、印象が良ければ窮地を脱することも可能となることがあります。
「備えあれば憂いなし」です。他人事と考えることなく、普段から準備をしておきましょう。「自社だけではなかなか難しい」ということであれば、リスク対応専門のコンサルティング会社などに依頼することをお勧めします。当社でも対応可能ですの、ご必要の際はご相談ください。
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今回の記事は以上となります。
お読みいただきありがとうございました。