日本人は本当に長生きになりました。
戦後すぐ、昭和22年の平均寿命は、男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。
しかし、その後、平均寿命はぐんぐんと伸び、厚生労働省が2018年7月に発表した簡易生命表によると、2017年の日本人の平均寿命は、男女ともに過去最高を更新し、男性は81.09歳、女性は87.26歳でした。
医療技術の目覚ましい発展により、今後さらに日本人の平均寿命は伸びることが予想されています。
そして、昨今では、人生100年時代と言われていて、人生100年時代を生き抜くには、年金以外に2000万円が必要との報道が話題になりました。
「長生きはいいこと」このように言われていますが、それは「健康であれば」という前提条件が付きます。
そこで健康寿命(※)を見てみましょう。
厚生労働省が2018年3月に公表したまとめによると、日本人の2016年の健康寿命は男女ともに過去最高を更新し、男性は72.14歳、女性は74.79歳でした。
(※健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活が制限されることなく自立して生活できる期間のこと。要支援や要介護状態にならずに生活できるのが何歳までか?ということを表しています)
平均寿命から健康寿命を引くと、男性は8.95年、女性は12.47年間、自立して生活することができない期間があることがわかります。
特に問題となっているのが認知症の問題です。
認知症は、家族にも重い負担がかかりますが、周囲とのトラブル等から、いくつかの社会問題が発生していて、もはや個人のレベルでは対応が難しい問題となっています。
私の母も、認知症が発症してから亡くなるまでの6年間は本当に大変でした。
母が認知症になる前、既に認知症の親を持つ友人から冗談のように「癌で寝たきりの親の面倒をみるほうがずーっと楽だよ」と聞いたことがありましたが、あながち冗談ではないなと感じました。
24時間気を抜ける時がありませんし、何をするか予想のつかないところもあり、精神的な疲労はかなり大きかったです。
今年に入り、私の友人も、父親が認知症になったことで東京での仕事を辞め、地方の実家に戻りました。
介護離職の問題は、ここ数年様々なメディアでも取り上げられていましたから、そういった問題がある事自体は認知していました。身近にこの問題があると「これは本当にどうにかしないと日本は大変なことになってしまう」と痛感しました。
認知症の親の介護は、もはや一つの家族だけの努力では厳しい局面を迎えていると感じましたし、これは、国がなんらかのサポート機関を作る必要があるのではないかと強く感じるようになっていました。
そのようなとき、嬉しいニュースを目にしました。
認知症の人やその家族が、地域の人たちや専門家と交流したり、情報交換ができる場として「認知症カフェ(オレンジカフェ)」が増えているという内容のニュースです。
この背景には、日本政府が6月に示した認知症施策の推進大綱で、2020年度末までに全市町村へ認知症カフェを普及させることを目標に掲げたことがあります。
認知症カフェの狙いは、認知症の方が住み慣れた場所で、自分らしく暮らしていくこと。
そのなかで認知症カフェは、介護者を支援するという観点から成り立っています。それが、認知症の方本人の生活の質を向上させることにもつながるからです。
カフェと言っても、イベントとして月数回、定期的に開催されるケースが多く、事前予約が必要なこともあります。
運営するのは、NPO法人・社会福祉法人・医療機関・市町村・家族会・個人など。
開催場所は、介護サービス施設・医療施設・公民館・個人宅・カフェ・レストランなど、さまざまです。参加費はそれぞれ異なりますが、無料もしくは数百円程度です。
厚生労働省によると平成26年度の実績調査では、41都道府県280市町村にて、655カフェが運営されています。
東京都町田市でも、2016年から「Dカフェ」という名の認知症カフェを市内で定期開催する取り組みをスタートさせています。
この取り組みに応じた施設のひとつが、あの、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社の町田金森店です。
この店舗の一部を「Dカフェ」専用の席として提供を行っています。
この店舗のストアマネージャーが、近くにある特別養護老人ホームの関係者からDカフェのことを聞き、「Dカフェはスターバックスの理念に合う」と感じたそうです。
スターバックスでは、各店舗が近隣のコミュニティを知り、地域とのつながりを築くために自主的に活動する「コミュニティコネクション」に取り組んでいるとのこと。
コミュニティの幸せと繁栄なしに、スターバックスの成功はないと考えてるからだそうです。
ここに集まるのは、認知症の当事者、その家族、ケアに当たる医師や施設の人達。
それぞれが普通のカフェにいる人達のように話をしています。
認知症とスターバックス。
この組み合わせは新鮮ですね。認知症が持つ暗いイメージが明るくなるような気がします。
認知症は、未曾有の高齢化社会を迎える日本が避けては通れない切実な問題です。
認知症の人が家族にいる場合、どうしてもその家族は暗くなり周りとの交流が少なくなりがちです。しかし、今後このようなカフェがたくさん増えていくことで、社会全体で認知症問題に取り組んでいく空気が醸成されることが期待されます。