最近、改めて口コミマーケティングとアンバサダーマーケティングが注目されています。その背景にあるのが次の3つです。
1.Appleの広告規制
Appleは、自社のプラットフォーム上で配信される広告に対して、厳しい規制を設けています。この規制は、ユーザーのプライバシー保護と、App Storeの健全性を維持する目的で2020年頃から段階的に導入されており、アプリ開発者や広告主、そしてユーザーに大きな影響を与えています。Appleの広告規制により、SNSサービスを展開する企業は数兆円規模で売り上げを落としています。
2.個人情報保護の強化
ユーザーの属性や興味・関心、行動履歴などの情報に基づいて、そのユーザーにとって、より関連性の高い広告を配信する広告手法であるターゲティング広告に関しては欧米を中心に、個人情報保護の観点から規制が強化されていて、日本もこれに追従すると考えられています。
3.広告をブロックするユーザーの増加
SNS、動画配信サービス、ブログなどを閲覧していて「広告が邪魔」と感じる人は多いでしょう。世界中のインターネットユーザーの37%以上(16歳から64歳)が広告をブロックしているという統計データもあり、最新のブラウザには最初から広告ブロックがインストールされているものも多くあります。また、広告をブロックするソフトの売れ行きも好調のようです。
広告の中でもインターネット上の広告は、費用対効果が明確にわかるため、今やあらゆる広告手段の中でも中心的な存在になっています。しかし、前述した3つの要因によって、その価値に揺らぎが生じ、広告に代わるものとして「口コミマーケティング」「アンバサダーマーケティング」に再び注目が当たっているというわけです。
では、ここで「口コミマーケティング」「アンバサダーマーケティング」について復習しておきましょう。
口コミマーケティング
口コミマーケティングと一口に言っても、その種類は多岐に渡り時代の変化と共に変化を遂げています。
代表的なものは次の3つでしょう。
バズマーケティング
日常会話でも耳にすることが多い「バズる」というやつですね。これは、口コミやSNSなどのオンライン上の話題を通じて、商品やサービスを短期間で認知拡大させるマーケティング手法です。英語の「Buzz(バズ)」には、「ハチが飛び回る音」という意味があり、人々の間で話題が次々に飛び交う様子を表しています。
インフルエンサーマーケティング
SNSなどのソーシャルメディア上で影響力を持つ「インフルエンサー」と言われる人に商品やサービスを紹介してもらい、消費者の購買意欲を高めたり、ブランド認知度を向上させたりするマーケティング手法です。
プロダクトシーリング
プロダクトシーリングという言葉は聞きなれないかもしれませんね。この手法は、インフルエンサーやメディア関係者、または特定の分野で影響力を持つ人に製品を無償で提供し、口コミやレビューを促進する手法を指します。インフルエンサーやメディア関係者が製品を実際に使用し、ブログやSNSなどで紹介することで、製品の認知度や購買意欲を高めることができます。
アンバサダーマーケティング
アンバサダーは日本語では「大使」や「使節」という意味になります。アンバサダーマーケティングとは、製品やサービスの熱狂的なファンである「アンバサダー」を起用し、口コミやSNSを通じて商品やサービスをPRしてもらうマーケティング手法です。従来の広告とは異なり、消費者の自然な声で商品を訴求できるため、高い信頼性と説得力を持っています。
最近では、このアンバサダーマーケティングを仕掛ける企業が特に増えていて、多くの有名人が次々にアンバサダーに就任しています。
その中でもメジャーリーグのスーパースターである「大谷翔平」選手がアンバサダーを務める企業数は群を抜いています。
現在、同選手がアンバサダーを務める企業は下記のようになっています。
伊藤園、ディップ株式会社、株式会社ECC、セイコーウオッチ株式会社、ニューバランス(new balance)、株式会社コナミデジタルエンタテインメント、ポルシェ(PORSCHE)、ヒューゴ・ボス(HUGO BOSS)
この中でも、伊藤園は大谷選手をアンバサダーに起用した後に行ったPR展開は度肝を抜きました。
大谷選手の地元である岩手県の盛岡駅を始め、国内12都道府県82か所。海外ではニューヨークやロサンゼルス、韓国、台湾の海外6か所で屋外広告を展開しました。ニューヨークのタイムズスクエアの大画面に出された「お~いお茶」と「大谷選手」が並んだ広告映像は感動モノでした。また、国内外60紙以上の新聞への全面広告という形で、大谷翔平選手へのエールを込めた手紙も公開しています。
アンバサダーマーケティングで大きな効果を得るには多額の費用が必要となるケースが多いのですが、口コミマーケティングはそれほど費用が掛かりません。ただし、頭に汗を書く必要はありますね。
今後、益々インターネット上の広告に関する規制は強くなると思われます。インターネット広告により収益を上げている企業はその代替手段を早期から模索する必要があるでしょう。
本日の記事は以上となります。
お読みいただいてありがとうございました。