ビジネスシーンにおいては、こちらの意図を悟られないままに、相手がこちら側の要請を受け入れてくれるように仕向けるテクニックを知っておくと便利です。
そこで本日は、相手から承諾を導く技法を4つご紹介します。
★段階的要請法
最初に誰でも承諾するような小さな要請を出して、これを承諾・実行してもらい、次に目的とする大きな要請をするという方法です。
これによって、最初から大きな要請をするよりも、承諾率を高めることができます。
心理学者のフリードマンとフレイザーは、主婦に電話して「5、6名の調査員が直接家庭を訪問し、2時間かけて日用品や家財道具などの使用状況を調査させて欲しい」と依頼をしましたが、これを承諾したのはわずか22%でした。
これに対し、電話で家庭用品について8つの簡単な質問に答えてもらった数日後に、先ほどと同じ質問をすると、承諾率は53%に上がりました。
人は一度承諾してしまうと、二度目の頼みごとを断りにくくなります。
これは、心理学で言う「自分の行動に矛盾を起こしたくない」という”一貫性の法則”が働くからです。
★譲歩的要請法
まず、誰もが拒否するような大きな要請を出しておいて、実際に拒否させ次に目的とする(相対的に小さな)要請を出す方法です。
社会心理学者のチャルディーニが次のような実験を行っています。
大学の構内を歩いている学生を呼び止めて「非行少年のグループを動物園に連れていくので、2時間ほど手伝いをして欲しい」と要請したところ承諾率は17%にしかすぎませんでした。
ところがこの譲歩的要請法を用いて、最初に「最低2年にわたり、週に2時間非行少年のカウンセラーをボランティアとしてやって欲しい」と依頼して拒否させ、その後、同じ要請を行うと、承諾率が50%になりました。
この方法が成功するのは、「譲歩の返報」によると言われています。
つまり、相手が要求を引き下げることが一つの譲歩とみなされ、返報性の法則※に従い、今度は自分が譲歩する(第2の小さな要請を受け入れる)番だという気持ちになるからです。
※「返報性の法則」とは「他人から何らか恩恵を受けたら、似たような形でお返しをしなければならない」という気持ちになる法則のこと。
★承諾先取り法
最初に、とても良い条件である選択をさせます。
その後、何らかの理由を付けて、その条件を取り除いてしまい、その上でもう一度選択をさせます。
この場合、もはや決して自分にとって有利な条件ではないのに受け手は最初の決定を覆すことをせずに、そのまま受け入れてしまう傾向が強くなります。
少しわかりにくいかもしれないので次に具体例を示します。
紳士服店やディスカウントストアなどでは、よく「閉店セール」をやっています。
店舗の軒先には「閉店セールににつき、店内最大70パーセントオフ」という張り紙がされていることがあります。
この割引率に惹かれて店内に入ってみると、実際にはほんの一部の商品特に型落ち品だけが70パーセントオフだったりします。
気に入った商品を見つけたものの、その商品は人気商品で定価のまま。
店員さんに勧められ、つい購入してしまうなんてこともあります。
★利益付加法
最初に商品と価格を提示し、その後に「別の小さな商品を付ける」「このサービスもつけます」などと言って有利な条件を付加する方法。
最終的な価格で販売することを最初から意図しているのですが、それを最初から言わないで、まず(最初の)高い価格で買うことについてお客が考える機会を与えます。
この方が、最初からすべての条件を提示するよりも効果があることが知られています。
この手法はテレビ通販などでよく使われています。
例えば次のような例です。
「このダ〇〇ンの掃除機が今なら39800円でお求めいただけます。ただし、数に限りがあります。先着200名様限りでのご提供となります。また、さらにお得な特典があります。今回ご購入いただいたお客様には、なんと現在お使いの掃除機を10000円で下取りさせていただきます。さらにさらに、布団のダニ除去専用ノズルと年末の大掃除に欠かせない水回り専用の洗剤セットまでお付けします」
いかがですか?
「うん?どこかで聞いたようなセリフだな。。」
このように感じたのではないでしょうか?
利益付加法で販売されると、「なんとなくお得なのかな~」って思ってしまいますよね。
以上、4つの方法をご紹介しました。
いかがでしたか?
ビジネスの場は「交渉合戦」と言っても過言ではありません。
交渉に長けた人は、相手から承諾を導く技法を意識して使っていることが多いのです。
ここでご紹介した例は誰でもすぐに応用が効くものばかりです。
ご自身のビジネスにどう応用ができるか考えて、今日から使ってみてください。