最近「リスキリング」という言葉を耳にしたり目にしたりすることが増えたと感じませんか?
「なんだそれ?初耳」という人もいるでしょうし、「な~んとなくわかる」という人も多いでしょう。
「ちゃんと理解してるよ」という人は少ないかもしれませんね。
しかし、このリスキリングってとても重要なことなんです。
本日の記事では、このリスキリングのことがスッキリと分かるようにご説明しますね。
では、始めていきましょう。
リスキリングとは?
まず、そもそも「リスキリングって何なのか?」ということを説明しますね。
「リスキリング(Reskilling)」ってなんだか難しい感じの響きですが、職業能力の再開発、再教育のことを意味します。
たとえばリスキリングを身近な例でいうと「コロナ禍で対面での会議や営業ができなくなったとき、ZOOMなどのテレビ会議システムを使い、効率的な会議や営業を行うために必要なスキルを習得する」
これもリスキリングですね。
このことを聞くと「なんだ~簡単なことなんだ」って感じですよね。
最近では、企業のDX※(デジタルトランスフォーメーション)戦略において「社内で新たに必要となる業務に人材が順応できるようにする再教育」という意味でも使われることが増えていて、どちらかというとこの側面が強いかもしれません。
(※DXとは、AI、ITツール、デジタルテクノロジーなどを利活用して、これまでにないサービスやビジネスを創出し、新たな顧客価値を提供し、ひいては会社の成長を促す活動のこと。)
リスキリングは基本、企業が従業員のスキルを向上させ、競争力を高めるために行うものです。時代の要求に即したスキルを持った人材を養成しないと業績は悪化し、ライバル企業に負けてしまいます。しかし最近では、個人が自発的にスキルアップを図り、更にステップアップした仕事を得るための活動もリスキリングと言われています。
経済産業省もリスキリングを重要視していて、同省ではリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金(一次公募)に関し、51件の事業を採択しています。
でもここまで読んでくると、「リスキリングってなんだかかっこよく言ってるけど、ただの職業能力の再開発、再教育のことでしょう?そんな、今さら騒ぐようなことじゃないよね」と感じる人も多いでしょう。
確かに、昔も今でいうリスキリングが大きく叫ばれた時が2回ありました。
まず1回目は、今から40年近く前です。
当時のオフィスワークは「文字は手書き、計算は電卓、表などの作成は定規で行う」
こんな感じでした。
しかし、パーソナルコンピューターやワードプロセッサーが各部署に1台ずつほど置かれるようになりはじめたころ、「仕事のやり方、ビジネスが大きく変わる。これからはデジタル化に即したスキルを身に付けることが必須である」
こういった世間の風潮を受け、パソコン教室なるものがポチポチと巷に登場し始めました。
次に2回目は、1995年、インターネットの商業利用が開始されたときです。インターネットを利用した、それまでにはなかった全く新しいビジネスが次々と創出され「IT革命」という言葉が流行しました。
しかし、今回は今までとは大きく違う要素があるのです。それについては次にご説明します。
リスキリングはなぜ話題になっているのか?
では、なぜ今リスキリングが話題になっているのでしょう?
次の3つが大きな要因だと考えられます。
1. 世界経済(ダボス)会議で「リスキリング革命」が発表されたこと
2020年1月に行われたダボス会議で「2030年までに世界で10億人のリスキルを目指す」と表明されました。
リスキリング革命の大きな骨子は、第4次産業革命に伴う技術の変化に対応した、新たなスキルを獲得するために、2030年までに10億人により良い教育、スキル、仕事を提供するという内容です。
リスキリング革命が発表された背景には、DX化の急速な加速や浸透が挙げられます。これによって、仕事を行う上で求められる人材のスペック・スキルは急速に変化することが予測されます。このことは、今の仕事が今後も続くことが保証されない、今持っている知識や技能が仕事に活かせなくなる可能性を示唆しています。
ちなみに世界経済(ダボス)会議の「リスキル革命」というセッションでは「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」と報告されています。
新たに生まれるとされる9700万の仕事というのは、今現在、多くの人が標準的に持っているスキルではこなすことができない可能性が高いでしょう。そういった意味でもリスキリングは非常に重要ということです。
この部分が過去2回、リスキリングが世間の注目を浴びたときと大きく違う点です。第4次産業革命では過去にないほどドラスティックに仕事のありようが変化するわけです。
2. 岸田首相が所信表明演説で、リスキリング支援を目的に5年で1兆円の予算投下を表明したこと
2022年10月、岸田首相は衆院本会議で所信表明演説した際、個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明しました。
「1兆円」です!凄い金額ですよね。この金額を見ても日本がいかにリスキリングに力を入れているかがわかります。
なぜこのような多額の予算をつけたのでしょう。
それは、リスキリングを通じて新しいスキルや知識を習得してもらうことにより、業務の生産性を向上させ、社会全体の賃上げをするためです。
「賃上げ」これは政府にとって喫緊の課題です。
1983年頃、「ジャパゆきさん」という言葉が流行りました。これは、アジア各国から日本に出稼ぎに来る女性のことを指した言葉です。この時期はアジアの女性だけではなく、男性も多く日本に出稼ぎに来ていました。
しかし、今ではその状況は大きく変化しました。日本の賃金は、OECDの中で最下位グループにあります。その賃金はなんとアメリカの約半分。韓国より低い水準です。昔の日本では考えられないことですが、オーストラリアのファーストフード、スーパーなどに出稼ぎに行く若い日本人も増えています。
低賃金化が継続するようでは、若者は日本の未来に夢を抱けないでしょう。ここは政府も本腰を入れて頑張って欲しいものです。
3. ChatGPT等の生成AIの登場
生成AIの登場で、今まであった仕事が確実に無くなりつつあります。それが顕著なのが「文書作成」「データ分析」「広告のコピー作成」の分野でしょう。
大手企業、官公庁では日常業務に生成AIが活用され始めています。官公庁の一部が発出する文書作成はすでに生成AIによって書かれていたりします。また、日常業務で利用する頻度が非常に高いExcelと生成AIを結合させることで、データ分析等の煩雑で難易度の高い業務が自動化できるようになりました。
広告の分野でも生成AIは大活躍です。大手広告代理店の株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告事業本部において、ChatGPTを活用し、デジタル広告のオペレーションにかかる作業時間を大幅削減する「ChatGPTオペレーション変革室」を設立しています。
また、Facebook広告、リスティング広告、PPC広告などに使用するキャッチコピー、リード文を生成AIに作成させることで、広告出稿までの時間を大きく短縮し、PDCAサイクルを早く回すことができるためKPI達成に大きく寄与できます。
ちょっとした小ネタですが、今年の10月に開催される「SoftBank World 2023」のキャッチコピー「テクノロジーの新潮流。今、世界が動き出す。」はChatGPTが考えた650の案から選ばれたものだそうですよ。
本日の記事は以上となります。
今、「自分には何ができるのか?」スキルの棚卸を真剣に行い、対策を立てておくことが必要かもしれませんね。