最近は、働き盛りのサラリーマンが精神的な障害により休職に追い込まれることが多くなっています。
企業側からすると、働き盛りの社員は貴重な戦力であると同時に、重要なポストに就いていることも多いので、精神的な障がいによりその社員のパフォーマンスが落ちてしまうことは大きな損失になります。
また、鬱病による自殺者も増えているため、国は平成27年度より安全衛生法の一部改正により、常時50名以上の従業員が勤務する事業場を有する事業者は、該当する事業場に勤務する従業員に対して、年1回のストレスチェック制度を実施することを義務付けしました。
ストレスチェック制度が義務化された背景には先に書いたものも含め、次のようなものがあります。
・過労自殺の労災認定
・国際社会からみた日本の自殺率の高さ(働き盛りの年代での自殺が多い)
・精神障害等による労災認定件数の増加
しかし私達も、精神的なケアを企業側だけに委ねるのではなく、精神的な健康を保つための知識を備え自己防衛をしていく必要があります。
そこで今日は、数ある精神的な健康を保つための方法の中から「ABCDEモデル」というものをご紹介します。
この理論は、アメリカの臨床心理学者である「アルバート・エリス」が創始した論理療法におけるカウンセリング理論のことです。
人間の不適応な感情・気分・行動は、客観的な出来事から直接引き起こされるのではなく、物事の捉え方や解釈の仕方である認知傾向(信念体系)によって、引き起こされるとしています。
物事の捉え方を楽観的に解釈することで、ストレスから開放されることが期待できます。
また、何事も楽観的にポジティブに物事を捉える人のほうが人生の質も高くなるようです。
あなたは物事を楽観的にポジティブに捉えられる方でしょうか?
アメリカの心理学者で、うつ病と異常心理学に関する世界的権威の「マーティン・セリグマン博士」の研究でも、あらゆる面で楽観主義者の方が優位にあるとその研究成果を発表しています。
例えば一例を挙げると
・楽観主義者の子供の方が、悲観主義者の子供より学校の成績が良い
・楽観主義者の保険営業員の方が、悲観主義者の保険営業員より営業成績が高い
・アメリカ大統領選挙では、楽観的な発言の多い候補者の方が、悲観的な発言の多い候補者よりも当選する確立が高い
・楽観主義者の方が悲観主義者より寿命が長い
などです。
ではどうすれば悲観主義者の人が楽観主義者になれるのでしょう?
セリグマン博士は、悲観的な思考を調整して楽観的な考え方になる方法として前述した「ABCDE モデル」という手法を勧めています。
ABCDEモデルとは、悲観的な出来事が起きたら次のAからEを順番に実行していくというものです。
ご紹介しましょう。
(A)まず「困った状況(Adversity)」を書き出す
(B)次にその時の「思い込み(Belief)」を書き出す
(C)次に「その結果(Consequence)」を書き出す
(D)そしてBで書いた「思い込み」に対する「反論(Dispution)」を書き出す。反論のポイントは、「証拠」はあるか?「別の考え方」はできないのか?「それは本当に意味があるのか?」「その考え方は有効か」などです。
(E)こうして自分を「元気づける(Energization)」
例えば、営業マンが取引先の担当者に新商品を勧めたところ、無愛想な態度できつく断られたとします。
この状況に「ABCDE理論」を当てはめると次のようになります。
A:無愛想な態度できつく断られた
B:自分は能力のない営業マンだ
C:おそらく契約を取ることはできないだろう
D:いやいや、たまたま機嫌が悪かっただけかもしれない。または体調が悪かったとか?それか、すごく忙しいときに営業に行ったからそれがまずかったか?
E:しばらく時間をおいてからもう一度営業をしてみよう
こういった感じですね。
この ABCDEモデルの大きなポイントはBの「思い込み」の中に、事実とは異なる過剰に悲観的な「思い込み」を発見しうまく「反論」することです。
悲観的な思い込みが増えてそれが蓄積すると鬱病の引き金になることがあります。また、体調面でも不調になりますので注意が必要です。
「この思い込みに本当に正しい根拠があるのか?」
という観察力を養いましょう。
あなたも嫌なことがあったとき、落ち込むことがあったときには、この「ABCDEモデル」を使ってください。
きっと気持ちが楽になるはずです!