テレビ・雑誌・新聞等の視聴者数・読者数が少なくなっていると云われて久しいですね。
それに比例して、企業が投下する広告費もインターネットへシフトしています。2020年以降、その傾向は更に強くなるでしょう。
2018年、インターネット広告費(媒体費+広告制作費)は「1兆7,589億円」、テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は「1兆9,123億円」でした。
(電通発表日本の広告費より)
テレビメディア広告費の成長率は100%を超えることはまずないと思われます。それに対し、インターネット広告費の成長率は110%を超えるでしょう。
この成長率からいえば、2019年にインターネット広告費はテレビメディア広告費を追い抜いているのは確実だと考えます。
そして、2020年はさらに両者の広告費の差は広がっていくはずです。
こういった状況を鑑みたとき、PR・広報業務に関わる人は、昨年以上にインターネットを利用した広告・ PR・広報関連の知識、経験を増やしていく必要があります。
特にインターネットメディアの中でも一番注視しなくてはいけないのが「SNS」です。
SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service)のことであり、インターネット上で社会的ネットワーク(ソーシャル・ネットワーク)を構築可能にするサービスの総称です。
もっと平たく言うと、個人同士がインターネット上で繋がり、メッセージや写真・動画のやり取りができるツールです。
SNSが登場してからしばらくは、次の2点に注目が集まりました。
1.名もない個人の発言であっても注目されるその拡散性と影響力
ニュースを賑わせた「アルバイトテロ問題」に代表されるように、話題性があればその投稿は瞬時に社会に広まります。また、子供を保育園に入れることができない母親が投稿した「保育園落ちた日本死ね」の投稿は国会でも取り上げられるほどの影響力を持ちました。SNSがない時代には、名もない一般人の発言が国会で取り上げられるということは考えられませんでした。
2.新聞・テレビよりも早いリアルタイム性
地震・火事・台風・事故・スポーツの速報などは、テレビ・新聞よりも早くSNSで拡散されます。また、交通渋滞・列車遅延時の詳細な情報などもネットの交通情報よりも早く具体性を持って伝わります。
その現場にいる人がTwitterやFaceBookなどを使って発信しますから、電車の中の状態なんかがリアルタイムで生々しく伝わりますね。
その後、SNSが社会に広く浸透し普及してくると、従来の「拡散性」「影響力」「リアルタイム性」に加えて、「検索ツール」「連絡用ツール」としての用途が加わってきました。
それぞれについて簡単ではありますがご説明致します。
検索ツールとしてのSNS
インターネットで調べ物をすることを「ググる」と言いますが、これは、インターネット上で何かを調べるときは検索エンジンの「 Google」を使うことからきています。
(「自分はYahoo!を使って検索する」という人もいますが、Yahoo!はGoogleから検索結果の提供を受けています)
しかし、最近では若い女性を中心として検索の仕方に変化が起きています。
「ググる」のではなく「タグる」人が多くなっているのです。
タグるとは、ソーシャルメディアにおけるハッシュタグを情報の授受の起点として用いることを指す表現です。電通メディアイノベーションラボの天野彬氏が提唱しました。
例えば、外出先の渋谷で「美味しいロールケーキ」を食べたいと思ったとき、従来であれば、Googleに「渋谷 ロールケーキ」と入力し検索していましたが、タグる場合はSNS(Instagram等)で「#渋谷ロールケーキ」と検索するわけです。
この傾向は、Instagramのフォロワー数「958,000人」を誇るマルチクリエーターでタレント・モデルでもある”GENKING”さんが2016年に行われたイベントで次のような発言をしてから加速したように思います。
「Googleは使わない、SEO対策しているから」
「Googleで検索すると文字が出てくるし、(検索結果は)SEO対策されている。あとはスポンサー(広告)とかが上がってきて…ネットってリアルじゃない。Instagramは検索することで言葉より画像が表示される」
【写真はGENKINGさん画像出典元】
この言葉は検索エンジンマーケティングに関わる人達に衝撃を与えました。
若い女性にSNSでタグる行動が支持されている理由は、「情報の新しさ」「リアルタイム性」「情報の発信源が友人・知人であり信頼性が高い」が挙げられると考えられます。
「私の知ってるあの人がここのケーキを勧めているのであればまず間違いない。だってあの人はめっちゃスイーツに詳しいから」とこんな感じなのでしょう。
連絡用ツールとしてのSNS
大人の連絡用ツールといえば、LINE、メール、たまに電話というところでしょう。
ところが、10代から20代前半の若者は「Instagram」「Twitter」を連絡用のツールとして使う事が多いようです。
「え!LINEじゃないの?」と思いますよね。
10代から20代前半の世代の若者がLINEを使わないのは、次のような理由が多いようです。
「グループLINEの通知が溜まりすぎる」
「未読スルー、既読スルーしていたら文句を言われる」
「文章でのやり取りを終わらせたいのになかなか終わらない」
「文章でのやり取りが面倒」といった理由がLINEを使わなくなる原因のようです。
「Instagram」「Twitter」のDM機能を使い連絡を取るほうが気楽なのかもしれませんね。
この気持ちは大人の私でも分かりますね。
最近は企業からのプロモーション用のメッセージも多くなり、LINEを開くのが「面倒だな」と感じることも多くなりました。
しかし、メールは使わない、LINEも使わないでは、企業が若者にリーチする難易度が益々高くなっていますね。
若者がターゲットの商品を扱う企業にとっては頭の痛い状況です。
ここまでSNSの大まかな変遷をご紹介してきました。
では今年以降、SNSはどのように変遷していくのでしょうか?
私は注目しているのは「ライブ配信」です。
その名のとおり、ライブでいろいろなものを配信し不特定多数の人とつながることができるSNSです。
それを実現するのがライブ配信アプリ。
ライブ配信アプリとは、配信者とリスナーが、コメントやリアクションを通してコミュニケーションを取ることができるアプリです。
その中でも一番の人気を誇るのが「17 Live(イチナナライブ)」です。
このアプリはスマホひとつあれば、いつでも誰でもどこにいてもライブ配信を行ったり、観たりすることができます。
スマホひとつ持って世界中を旅しながらライブ配信を行うこともできます。
このアプリを開発・運営するのは台湾にあるM17 Entertainment。日本では株式会社17Media Japanがその運営にあたります。
世界中に展開し、全世界に4,200万人以上のユーザー数がいて、今でも凄いスピードで増え続けているとのこと。
このアプリの特徴はライブ配信者(17ライバー【イチナナライバ-】と呼びます)が、そのライブを見ている人から投げ銭と呼ばれるポイントを受け取ることができることです。
このポイントはお金に換金することができ、本場台湾では、月に1億円以上を稼いでる人もいます。
また、日本でも月に数百万円を稼ぐ人も珍しくないようです。
よく公園や駅前などで大道芸や楽器の演奏を披露して、投げ銭を受け取っていたりする人がいますが、あれがインターネット上に移ったというイメージで捉えてもらうと分かりやすいかもしれません。
大道芸や楽器の演奏などは、人より秀でたスキルが必要となりますが、このライブ配信アプリの面白いところは、特にこれといった特技がない人でも人気者になりお金を稼ぐことができる所にあると言えます。
単純に視聴者となんの変哲もない会話をしているだけのライバーもいます。それでも人気者になることができるんです。
人気 YouTuber と同じように、今後は人気イチナナライバーに対しては企業のスポンサーがついたり、また、企業から依頼をされて商品・サービスの PR をするようになるかもしれません。
YouTuberと同じように、中学生でも年収億単位の人が登場してくる日もそう遠くはないかもしれません。
今後、同じようなライブ配信アプリも数多く立ち上がってくるでしょうから、この市場に注目していきたいと思っています。