PRステーションでは、これまで企業や自治体の様々な広報PRの成功事例をご紹介してきましたが、福祉業界となると目立った事例はそれほど多くありません。そんな中、社会的に有意義な施策を次々と打ち出し実践することで注目を集め、ブランディングに成功してい社会福祉法人があります。今回はその事例をご紹介します。
福祉関連の職業への就労数を増やすために
超高齢化社会の日本。
しかし、介護・福祉関係で働く人材が著しく不足しているという現状があります。
都道府県が推計した介護人材の需要を見ると、2025年末には約245万人が必要になると見込まれており、それまで年間6万人程度の介護職員を確保していく必要があります。
介護人材を外国人労働者に頼る動きもありますが、国内でも何らかの施策を講じていく必要があります。
そこで、社会福祉法人あかね(兵庫県尼崎市)は、本格職業体験イベント『キッザケア』~子供たちが介護の未来を救う~を8月6日(日)に開催しました。
このイベントは今年で4回目の開催となります。
各回定員50名の2部制で、計100名の参加者を募集。職種は「介護士」「看護師」「管理栄養士」「保育士」の4つの職種から3職種を選んで体験する本格的な職業体験イベントです。
『キッザケア』と聞いて「あれ、それってあのキッザニアとなんか関係があるのかな?」と思った人も多いでしょう。
実は、『キッザケア』は、本家「キッザニア」への出店話から発展しできたものだそうです。
経緯は「尼崎市職員」から「キッザニア」に空きブースがあるという話を聞き、「キッザニアに介護ブースを出す社会的意義は大きい」という話になり、「キッザニア」に出店価格を確認。しかし、価格面がネックとなり断念。
であれば、「本物の福祉施設を使って独自の介護職業体験ができないか」と企画することに至ったそうです。
社会福祉法人あかねには、介護福祉を学んだことのない学生や、他業種からの中途採用者もいるそうですが、その多くは、何かしら介護に触れる機会があった人達だったとのこと。
核家族化が進んだ現代社会に育つ子ども達に、少しでも高齢者の人達と触れ合う機会を提供することで「将来はケアワーカーになりたいという気持ちを育んでもらえば」という開催の背景がありました。
お金をかけずに告知することが課題
「キッザケア」はボランティアとしての開催であるために「お金をかけずに告知する」ことも課題だったそうです。
そこで、尼崎市の市制100周年の取り組みに注目。
昨年のプレ記念期間に引き続き、今年も「キッザケア」は、尼崎市市制100周年記念事業に認定されました。
イベント自体に公共性を持たせることで、周辺の学校などへの依頼もスムーズに運んだとのこと。
小学校では、夏休みやゴールデンウィークなどの大型連休前に、休みの過ごし方などのプリントが必ず配布されるので、そのタイミングに合わせて『キッザケア』の開催日程を決定して、そのプリントと一緒に渡していただけるよう手配したそうです。
申し込みは公平性を考えて先着制にし、ネットでも募集し、30名の定員に対して2日で応募がいっぱいになったそうです。
今年で尼崎市市制100周年記念事業は終了とのことですが、この2年間の実績で、来年からも学校の協力は得られると想定しているとのことでした。
キッザケアに参加した子どもたちが、少しでも介護職に関心を持ち、高齢者をいたわる気持ちを持ってくれると嬉しいですね。
介護職を外国人労働者に頼る現状
キッザケアのような活動が他の施設にも広まり、子どもたちが将来の職業として介護士を選択する世の中になればそれはすばらしいことですが、少子高齢化が急速に進む日本では、それでは間に合わないというのが実情でしょう。
そこで国は、介護・福祉分野の人材不足対策として、外国人の雇用を増やそうとしています。
2019年4月1日には、新たな外国人材受け入れのための在留資格「特定技能」が施行されました。
「特定技能」とは、人材確保が困難な14分野(介護・建設・農業など)において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度です。
参考までに14分野をご紹介すると次のようになります。
①介護業
②ビルクリーニング業
③素形材産業
④産業機械製造業
⑤電気・電子情報関連産業
⑥建設業
⑦造船・舶用工業
⑧自動車整備業
⑨航空業
⑩宿泊業
⑪農業
⑫漁業
⑬飲食料品製造業
⑭外食業
いずれも「人材が不足しているな」と、感じ取れる業種が並んでいます。
政府は今後5年間に、最大で約34万5000人、「介護業」では最大6万人の受け入れを見込んでいます。
しかし、日本人労働者との賃金差別、賃金未払い、劣悪な住居環境、集団離職(逃亡)、技能指導の欠落などが問題点として指摘されています。
また、介護を受ける側では「言葉の問題による意思疎通」に対し心配の声も上がっています。
私達全人類に共通していること。それは必ず歳を重ね、そして死を迎えるということ。
これを避けることができた人は誰もいません。
超高齢化社会を”対岸の火事”として見ることはできない状況がすぐそこまで迫っています。
自分自身が介護の必要な状況になったとき、自分を介護してくれる人が外国人の可能性が高いと思うと、なんとなく複雑な心境になります。
介護職に就く人の賃金問題、職場環境の問題を、国は早急に改める必要があるでしょう。