2023年に週刊文春で報じられた、元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルによって、フジテレビをはじめとする関係各社が大きな影響を受け、世間からは大手メディア企業グループの問題として注目されています。
1月27日に開かれたフジテレビの記者会見は16時に始まり、終わったのはなんと翌日28日の午前2時20分頃。
この記者会見をご覧になった方も多いのではないでしょうか?
さて、この記者会見の中で頻繁に出たワードが「ガバナンス」と「コンプライアンス」です。
企業経営において「ガバナンス」と「コンプライアンス」は重要な概念です。しかし、これらはしばしば混同されがちです。
どちらも企業の健全な運営に関わるものですが、それぞれの目的や役割には違いがあります。本記事では、ガバナンスとコンプライアンスの意味や違い、そしてガバナンスの重要性について詳しく解説します。
ガバナンスとは
「ガバナンス(Governance)」とは、日本語で「統治」や「管理」を意味し、企業経営においては「企業統治」と訳されます。つまり、企業を適切に運営し、持続的な成長を実現するための仕組みやルールのことを指します。
企業ガバナンスの目的は、経営陣が適切な意思決定を行い、企業の健全な成長を促すことです。そのために、経営陣の行動を監視し、企業が社会的責任を果たしながら適切な利益を追求できるようにする仕組みを整えます。
企業ガバナンスの代表的な要素として、以下のようなものがあります。
- 取締役会の設置(経営陣の監督)
- 内部統制システムの構築(リスク管理や業務の透明性確保)
- 株主・投資家との関係構築(情報開示や適切な意思決定の促進)
企業ガバナンスの仕組みがしっかりしていれば、経営の透明性が高まり、不正や経営リスクを未然に防ぐことができます。
コンプライアンスとは
一方、「コンプライアンス(Compliance)」とは、「法令遵守」と訳されることが多い言葉です。企業においては、法律や社内ルール、社会的規範を守りながら業務を遂行することを意味します。
コンプライアンスには以下のような側面があります。
- 法令遵守(労働法、個人情報保護法、独占禁止法などの遵守)
- 社内規則の遵守(企業独自のガイドラインや行動規範)
- 倫理的行動の確保(社会的道義や企業倫理に基づく行動)
コンプライアンスが徹底されていない企業では、不祥事が発生しやすくなります。たとえば、粉飾決算や情報漏洩、パワーハラスメントといった問題が発生する可能性が高まります。こうした不祥事が発覚すると、企業のブランド価値が低下し、信頼を失うことになります。
ガバナンスとコンプライアンスの違い
ガバナンスとコンプライアンスは密接に関連していますが、根本的な目的が異なります。
項目 | ガバナンス(企業統治) | コンプライアンス(法令遵守) |
目的 | 企業全体の健全な経営と持続的な成長を確保する | 法令やルールを守り、不正や違反を防ぐ |
対象 | 取締役会、株主、経営者などの企業の意思決定機関 | 全社員(従業員、管理職、経営陣) |
アプローチ | 経営の仕組みを構築し、透明性や適切な監視を行う | 法律や社内規則を守るための教育や監視を行う |
結果 | 長期的な企業価値の向上 | 社会的信用の維持 |
ガバナンスが必要な理由は?
企業が持続的に成長し、社会的な信頼を獲得するためには、ガバナンスが不可欠です。ガバナンスが求められる主な理由は以下の通りです。
1.不正や不祥事の防止
ガバナンスが弱いと、不正会計や汚職、ハラスメントといった問題が発生しやすくなります。適切な監視体制が整っていれば、経営陣の暴走や不正を未然に防ぐことができます。
2.企業価値の向上
ガバナンスが強化されると、経営の透明性が高まり、投資家や取引先からの信頼を得ることができます。これにより、株価の安定や資金調達の円滑化につながります。
3.経営の安定と持続的な成長
明確なガバナンス体制があることで、企業の意思決定が合理的になり、変化の激しい市場環境の中でも適切な対応ができるようになります。
ガバナンスが強いとどのようなメリットがあるのか?
ガバナンスが強化されることで、企業にはさまざまなメリットが生まれます。
1. リスク管理の強化
企業の不祥事や財務リスクを未然に防ぎ、経営の安定性を高めることができます。
2. 投資家や取引先からの信頼向上
適切なガバナンス体制を持つ企業は、投資家からの評価が高くなり、資金調達がスムーズになります。
3. 従業員のモチベーション向上
企業の透明性が高まることで、公平な評価制度が確立され、従業員のエンゲージメントが向上します。
4. 社会的信用の向上
ガバナンスがしっかりしている企業は、社会からの評価も高く、優秀な人材の確保やブランド力の向上につながります。
ガバナンスを強くするために必要なこと
ガバナンスを強化するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1.取締役会の強化
取締役会の独立性を高め、経営陣の監督機能を強化することが必要です。社外取締役を適切に配置し、客観的な視点から経営をチェックできる体制を整えましょう。
2.内部統制の充実
業務の透明性を確保するために、内部監査を定期的に行い、不正やミスを防ぐ仕組みを作ることが大切です。
3.コンプライアンスの徹底
ガバナンスを強化するためには、社員一人ひとりがコンプライアンスを意識することも重要です。定期的な研修を実施し、法令遵守の意識を高めましょう。
4.情報開示の透明性向上
企業の財務状況や経営方針を積極的に開示し、株主やステークホルダーとの信頼関係を構築することが求められます。
最後に
今回のフジテレビの問題は会社のガバナンスの弱さとコンプラインス意識の低さにあるのは間違いありません。しかし、ここまで大きな問題となった一番の原因は、1回目に開かれた記者会見だと考えます。
フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんが「マスコミは追求するのは得意だが、追求されるのは苦手」というような趣旨のお話をされていましたが、まさにそのとおりで、1回目の記者会見は世間の目には「逃げ」としか映っていなかったでしょう。
1回目の記者会見を適切に開いて、マスコミや世間に誠実な対応をとっていればこれほどまでに叩かれることはなかったはずです。
記者会見を失敗したことで窮地に立たされた企業は数多くあります。これは普段から「記者会見」を甘く見ている証拠とも言えます。
あなたの会社は大丈夫でしょうか?
弊社では記者会見に関するサポートも行っています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
本日はお読みいただきありがとうございました。